青い猫の花嫁
かああっと頬が熱くなる。
思わず俯くと、クシャリと髪を撫でられた。
ハッとして顔を上げると、先生はいつもの先生に戻っていた。
「それじゃ、俺は仕事があるから先に失礼する。あんまり遅くなるなよ」
「へ?あ、はい」
慌てて頷くと、先生は廉次さんに声をかけてさっさとお店を出ていってしまった。
ボサボサの髪のまま、ぼんやりとお店の入り口を眺めていると、廉次さんが隣に腰を落とした。
「3日間、目を覚まさなかったんだってね」
「あ、はい。そうみたいで……」
廉次さんはそう言って、あたしの顔を覗き込んだ。
「もう、平気なの?」
「はい。大丈夫です。このネックレスつけたらなんだか疲れも飛んじゃって」
えへへって笑うと、あたしは胸元から指輪のついたネックレスを取り出した。
それをジッと見つめた後、廉次さんは目を細めて言った。
「……僕はずっと思ってたんだ。どうして、鼠が猫に嘘をついたのかって」
「……」
「僕が嘘をつかなければ、十二支も猫も、こんな楔に苦しむことはなかったんじゃないかってね」
そう言って、廉次さんはトワのいるカフェテラスへと視線を向けた。