青い猫の花嫁
それからお店を出ると。
すぐにあたしに気付いたトワが、その瞳を細めた。
彼の蒼穹の瞳は、その色を無くし淡い茶色をしていた。
それは、彼が猫憑きでなくなった証。
ちょこんとその隣に腰を落とすと、すぐにトワがあたしの手を握りしめた。
なんだか照れくさくて、火照った頬を隠すように空を仰ぐ。
「きれいだね、星」
「うん。降ってくるみたいだ」
そう言って、あたし達は夜空を眺めた。
ほんとだ。
トワが言ったように、夜空の星は今にも零れ落ちそうだ。
手を伸ばしたら、ひとつくらい掴めるかな。
「俺さ、真子」
「うん?」
そんな事を思っていたあたしに、トワが呟くように言った。
空から視線を落とす。
すると、トワは真っ直ぐにあたしを見つめていた。
トクンって、胸が鼓動を刻む。
ただ、目が合っただけなのに……。
こんな自分に、今更ながら驚いてしまった。
「俺、真子に会えてよかった」
「……トワ」
「真子じゃなきゃ、こんな気持ちも知らずにいたんだと思う」
繋いだ手にキュッと力をこめて、トワはそこに口づけを落とした。
「……」
トクントクンってどんどん加速する。
トワから目が離せない。
上目使いで覗き込まれて、あたしは瞬きも忘れていた。
空色の髪。
大きくて、少したれ目がちの瞳。
いつも少し気だるそうで、無表情だったトワ。
そんな彼が、いつの間にかこんなふうに瞳の中に揺れる光を宿してる。
あたしはそれが嬉しくて、トワの手を握り返した。