青い猫の花嫁
ハッとして見上げると、眉間にシワを寄せた正宗さんがいて。
瞬間、今度はお抹茶の香りと、甘いお茶菓子の香りが鼻をかすめる。
「よさないかと言ってるんだ。 まったく女性を見たらすぐそうだ、廉の悪い癖だな……。あ、そうだ」
正宗さんはそのまま廉次さんから遠ざけるようにすると、何かをあたしに差し出した。
「これを」
「え?あの……」
手渡されたのは、爽子からもらったチャームと、金色のチェーンだった。
器用にチャームの留め金にチェーンに通して首に着けてくれた。
「これに括り付けておけば、無くさない」
「……。ありがとうございます……」
胸元でキラリと光る猫のチャーム。
なんだちょっぴり複雑……かも。
無くなってもいい、なんて思ってたから。
ジッと見つめていると、さらにその背中を押される。
「ささ。それでは、行ってください。……おやおや。彼が門まで迎えに来たようです」
「?……はい」
なぜか楽しそうに笑う正宗さんに促されて、結局なにもわからずあたしはお屋敷を後にした。