青い猫の花嫁


よかった……誰もいない。

人の気配がない事を確認すると、腕の中の猫をそっと下ろす。


ストンと軽やかにアスファルトの上に降り立った猫は、ブルブルと全身を震わせた。

水滴が飛んできたけど、そんなのはどうでもよくて……。
あたしは突っ立ったまま、空色の猫を見つめていた。


さっき、しゃべったよね?
人間の言葉……言ったよね?

信じられない。

でも確かに、その猫から発せられた声は、聞き覚えのある透明な声だった。


聞き間違うはずがない。


トワの声。





「はあ……雨が降るなんて、油断してた」

「……」

「いつもなら匂いでわかるんだ。でも、今日は、どうかしてた」



トワの声で話す猫はそう言って、あたしをスッと見上げてきた。
蒼穹の瞳。

まんまるのガラス玉が、キラキラ光ってる。


猫はその瞳を細めた。


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