青い猫の花嫁
ドックンドックン
心臓が躍りだして、慌ててブルブルと首を振った。
ま、惑わされるな、あたし!
「真子?なにしてんの。遅刻するよ?」
「……」
ホラ!やっぱりトワには何の意味もない事だったんだよ。
でも、だったらなんで松田くんが勘違いしちゃうような事するのかな。
それとも、トワはあたしが傷ついたと思った?
あたし、松田君の事、もう平気なんだよ?
色んな思いが一気に頭の中を駆け巡る。
ぐるぐるぐるぐる、ショートしちゃいそう。
「すぅぅぅ、はあああ!」
あたしは思いっきり深呼吸して、その息と一緒に訳のわからない想いも吐き出した。
よし。もう平気!
「真子?」
首を傾げるトワに、あたしは笑顔を向けた。
「なんでもない。行こっ」
「…………」
鞄の紐をキュッと握りしめて、あたしは学校への道のりを急いだ。
街路樹を見上げると、寒そうな枝の向こうに、桜の木を見つけた。
その枝の先には、ぷっくりと膨らんだ蕾。
この寒さにまた身を縮こめて、咲くに咲けなくてもどかしそうにしている。
空には薄い雲。
真っ白な息が、色を濃くしたような気がした。