青い猫の花嫁
「まあ、蓋を開けてみれば、そこまで思い悩むほどでもないかもしれないって事」
「……はあ」
ますますわかりません。
廉次さんって実は、すごく頭いいんだろうか……。
見た目チャラかったりするけど、物凄く考えてる人だったりして……。
見守るような、心配するような、それでいて何を諦めているような廉次さんの眼差し。
その瞳がふいに、あたしに落ちた。
ドキン!って思わず心臓が跳ねる。
わ……廉次さんって、長い前髪でわからなかったけど、すごく綺麗な顔。
トワの親戚って、まさかみんな美形揃いだったりするの?
廉次さんに見つめられてドギマギしていると、呆れたようなため息が聞こえた。
「真子」
「え?」
ハッとして今度はトワを見上げる。
「廉のいう事、真に受けないで。あんまり考えてしゃべってないから」
「ヒドイ、トワ!それがお兄さんに言う言葉!?」
「兄さんって誰? 俺は一人っ子」
「そういう事言ってるんじゃないのっ」
「はあ? じゃあ何」
れ、廉次さん……。
「真子ちゃんも大人をそんな目で見ないっ」
あたしまでなぜか突っ込まれ、それに対してトワが文句をいい、その光景を見ていたら思わず笑ってしまった。
へえ……トワってこんな一面もあるんだ。
無関心、無頓着そんなトワしか知らなかったから、こんなふうに積極的に会話してる姿を見たのは初めてだった。
「って、ああ引き止めちゃってごめんね?雨降りそうだし、早く帰りな?」
空を見上げた廉次さんがそう言った。
見ると、確かにどんより重たい雲が、足早に流れていた。