青い猫の花嫁
優しい雨の夜
雪……じゃなくて雨が降りだしていた。
しかも、ものすごい豪雨。
ゴロゴロゴロ
さっきからずっと雷もなっていて。
両親がハワイに行って、あたしとトワ、ふたりだけの家で、テーブルを囲んでいた。
「……食べれる?」
恐る恐る声をかけると、鋭い眼光が突き刺さった。
「食べれるわけないでしょ。しかも今日に限ってドリア……」
向かい側では、結局雨に濡れて猫になってしまったトワがちょこんと座っていて。
彼の目の前には、お母さんが出かける前に用意していってくれたドリアが、美味しそうな湯気を立てていた。
「なるべく冷ましたんだよ?あ、そうだちょっと待って」
トワのドリアを小さなティースプーンですくうと、念入りにフーフーと息を吹きかけた。
「ふぅ、ふぅー……はい。アーンして?」
これなら手も足も使えない猫トワでも食べれるはず!
そう思って、ズイっとピーンとヒゲの生えたトワの口元にスプーンを差し出した。
「……」
「トワ?」
「いいよ。元に戻ってから食べる」
スプーンを見つめたまま一向に口を開かなかったトワは、そっと目を伏せて言った。
「え?あ……やっぱり猫ちゃんだと食べにくいよね。えっと他のにする?あ、たしか冷蔵庫に……」
「真子」
ガタンと席を立ったあたしをトワが止めた。