青い猫の花嫁
立花真子。
……なんかすごい棒読みだったけど、確かに彼から発せられた名前は16年間慣れ親しんだあたしの名前だ。
オズオズと頷くと、彼は同じように頷いた。
「やっぱりそうなんだ。だったら早くしてくれる? こんなの時間の無駄」
「えええ!? た、確かにあたしがマコだけども!早くってなにが?」
「……」
説明が面倒くさいのか、無言のまま彼の手があたしの手首を掴んだ。
「ちょ、ちょっと!そこしっかり説明してよ!それにあたし、今から学校行かなきゃだし、結婚してる場合じゃないんだってば!」
「――学校?」
グイッと引きずられるように、ベッドから降りると彼はピタリと立ち止まり、不思議そうに振り向いた。
「そ……そう!あたし高校生だし、学校に行かなきゃだめなの!だから、あたしに結婚する意志はコレっぽっちもありませんっ。それでも連れて行くって言うなら、これって誘拐だから!誘拐っ。わかってる?」
掴まれたままの手を強引に引き離しながら、語尾を強調してみた。
ついでにビシッと驚いている彼の喉元を指差して。
ど、どーだ!
その瞳を、見開いていた彼はしばらく何も言わず、ジッとあたしを見下ろしていた。
何を考えてるのかわからないその瞳に見つめられると、なぜか居たたまれなくなってきて、それでもあたしは、負けないようにキュッと唇を噛みしめた。