青い猫の花嫁
お花見
広間へと続く廊下。
そこは少し薄暗くて、急に空気が変わった気がした。
このお屋敷はいったい、いくつ部屋があるんだろうか。
ずいぶんと歩いてる気がする。
行く先々には固く閉ざされた襖があって、少しだけ開いたその隙間から、時折さっきのような視線を感じた。
木の床を踏みしめる足音だけが静かに響く。
あたしの前には、総司朗さん、廉次さん、それからカナトくんと郁くんとナギさんだけで。
さっきまでいがみ合いをしていた男の人達は、また部屋に戻ってしまった。
そして、ようやくたどり着いた。
「――さ、ここだよ」
そう言って、ニコリと振り返った廉次さん。
「はあ、こんな場所まで来させやがって、マジうぜぇ」
小さく悪態をつくカナトくん。
その隣では、郁くんが苦笑いを零した。
他の誰もが、その表情を硬くする。
なぜだかわからないけど、胸がドキドキと高鳴りだした。
本当にあたしは、この奥に足を踏み入れてもいいんだろうか。
頭のどこかで、誰かがそう言ってる気がした。
ここで引きかえさないと、きっともう後戻りできない。
うんん、もうそんな事は無理なんだって、わかってる。
あの日、あの時。
あたしは、願ってしまったんだから……。
そうして、静かに襖が開き、仄かなロウソクの明りの和室に足を踏み入れた。