青い猫の花嫁

不思議に思った、その時だった。
音もなく襖があいて、誰かが入ってきた。

一瞬で空気が変わる。

あ、この人って……。

あたしは彼に見覚えがあった。

彼はそのまま、明りのそばに座り、集まった人たちの顔を見渡した。
そこで、あたしとトワの存在に気付き、グッと目を細めた。


「……さて。でわ始めましょうか」


そう言って穏やかな笑顔を浮かべたのは、正宗さんだ。
綺麗な着物を身にまとい、手には何か握られている。



「さあ、絆の証を見せて下さい」



……絆?

なんの事だろうと、トワを見上げると、その表情は曇っていて。
どこか緊張してるようだった。


正宗さんの顔からも、さっきまでの穏やかな笑顔は消え、漆黒の瞳が妖艶に光っている。
それは、以前感じたもので、その目は、ぽっかりと穴が開いてるようだ。



正宗さんは感情のない声で、言う。


「まずは、鼠」



ねずみ……?

< 96 / 323 >

この作品をシェア

pagetop