青い猫の花嫁
不思議に思った、その時だった。
音もなく襖があいて、誰かが入ってきた。
一瞬で空気が変わる。
あ、この人って……。
あたしは彼に見覚えがあった。
彼はそのまま、明りのそばに座り、集まった人たちの顔を見渡した。
そこで、あたしとトワの存在に気付き、グッと目を細めた。
「……さて。でわ始めましょうか」
そう言って穏やかな笑顔を浮かべたのは、正宗さんだ。
綺麗な着物を身にまとい、手には何か握られている。
「さあ、絆の証を見せて下さい」
……絆?
なんの事だろうと、トワを見上げると、その表情は曇っていて。
どこか緊張してるようだった。
正宗さんの顔からも、さっきまでの穏やかな笑顔は消え、漆黒の瞳が妖艶に光っている。
それは、以前感じたもので、その目は、ぽっかりと穴が開いてるようだ。
正宗さんは感情のない声で、言う。
「まずは、鼠」
ねずみ……?