青い猫の花嫁
何の事?
キョトンとしてると、人影がユラリと動く。
……廉次さん?
廉次さんは正宗さんの前に座り、何も言わずに服を脱ぎ始めた。
ええええっ、ちょ、いきなりなに?
「あ……っ」
思わず声が出そうになって、でもそれは口の中でとどまった。
トワの人差し指が唇に押し当てられたからだ。
それにもギョッとしてると、無表情のトワの唇が耳元まで迫る。
「良く見てて。真子にも見えるハズだよ」
「……え?」
さらにわけが分からずに目をパチクリさせてると、唇に触れていたトワの手が廉次さんを指した。
そのままトワの指し示す方へ視線を投げる。
……え……あれは……?
上着を脱ぎ捨てた廉次さん。
彼の露わになったうなじ、ちょうどそこが淡く光っていた。
月光に照らされて、白く輝く、雪のように。
……綺麗。
それだけだった。他の言葉なんていらない。
目を凝らすと、それは桜の花びらのような形をしていた。
正宗さんは、手に持っていたお札のようなものを、そっとあて人差し指と中指を唇に添えて何かを唱えている。
なんかこれ、どこかで見た事あるような……。
「……う、く……」
廉次さんの表情が、歪む。
なにが起こってるのかさっぱりわからずに、ただ茫然とそれを見つめていると、正宗さんの手からお札が消えた。
あれ?
それは、まるで廉次さんの体の中に溶けてしまったみたいだ。
そう、雪が溶けてしまうように……。