WITH


桜が満開に咲き誇り、ポカポカとした優しい陽光が降り注ぐ―――そんな春らしい日。


久々にゆっくり遠出しようと廉が提案して、私達は動物園へと向かっていた。


あの一件以来、電車が……というより駅のホームが苦手になった私のために、時間のかかるバスを利用して……





「カワイイッ!!廉、ちゃんと見てるー?」


「ん、見てるって」



興奮気味な私を見て、笑いを堪えながら答える廉にムーッとしながらも、目の前を飛び回り、時折肩に乗るリスザルたちにすぐに意識は戻り、ご機嫌な私。


動物たちがカワイイからだけじゃなく―――


今、廉と一緒にいられることや手を繋いでいられること、笑いあえていること。


何気ないことかもしれないけれど、それが普通に出来ていることが純粋に嬉しくて……


私は、緩む頬を隠すことなく素直に見せていた。



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