WITH
刺すような寒さを肌に感じながらも、なんとなく歩きたくて……
たぶん、二人の幸せそうな姿を見たこととシャンパンで高揚した気分がそうさせたんだと思う。
歩き続けて行くと、賑やかな繁華街の喧騒が聞こえ出す中、私はあえて避けるようにして喧騒の少ないバス通りを目指す。
「ねぇ、紗和ちゃんじゃない?」
そんな私の背後から聞こえた、おもしろいものを見つけたような、けらけらと笑い出しそうな楽しそうな声。
自分の名前を呼ばれた私は、あまり視線を上げることなく振り返って……
息を呑んだ。
そこには、にっと笑う口元だけが見えて、
「廉っ―――!?」
そう呼んでしまって、後悔した。