WITH
「ねぇ、紗和ちゃん?
―――オレの名前、覚えてる?」
歩き続ける中、私の肩を抱き寄せて耳元で囁かれるように言われた言葉に聞く耳を持たないでいると、
「“廉”じゃなくて、“晴哉”だよ」
けらけらと笑うその声に、頭を鈍器で殴られたような衝撃を受けた。
きっと、勘のいい男なんだと思う。
私がさっき発してしまった“廉”というワードだけで、私が男に抱かれる理由を見つけたに違いない。
そうじゃなければ、こんなこと言うはずがない。
立ち止まり“晴哉”と名乗る金髪男を、睨み付けるように見上げる。
“廉”じゃない、まったく違う男がそこにいることに落胆してしまうのが、何よりの真実。
私はもう、廉だけしか求めない……
そう決意したからこそ、廉に会うことも決めた。