WITH
長い廊下を歩いて到着した“1842号室”の前で、私は深呼吸をしてから呼び鈴を押した。
ドクドクと体中に響いているかのような胸の音が、うるさい。
クラクラと目眩を起こしてしまいそうな程、緊張が最高潮に達する寸前、カチャリとドアは開かれた―――
「久しぶり、紗和」
にかっと笑う廉に、さっきまでの緊張が嘘のように解けて、私も自然と笑みをこぼしていた。
「入れば……?」
そう促されて入ったホテルの部屋は、シングルベッドが2つにコの字型配置されたソファーとテーブルが淡い照明に照らされていて、少し広めの部屋だった。
真ん中のソファーに座り、斜め前に立つスーツ姿の廉を見上げると、ワイシャツの上ボタンを外しネクタイを緩めているところだった。