WITH
「紗和、疲れてる?仕事、忙しいんだ?」
「まぁ、それなりに……?
私より、啓祐の方が忙しいでしょう」
答えながら目を閉じると、
より強く煙草の香りがする。
私の目の前では吸わないけれど、啓祐が吸ったらしい煙草の香りが妙に心地好く感じられていた。
「俺もそれなり、かな?」
薄っすら目を開けて見えた先には、左手でネクタイを緩めながら片手運転をする啓祐の姿。
啓祐は大学病院に勤めるソーシャルワーカーで、毎日忙しいらしい。
働いている姿は数えるほどしか見たことがないけれど、
大変そう……というのは私でもわかる。
啓祐だって疲れているはずなのに、そんな顔を一度も見せたことがないから感心してしまう。