WITH
「ふーん…、あんたが“廉”なんだ?
……紗和ちゃん、オレのモノにしていいっすか?」
「……何言ってるか、わかってる?」
「ちょっと……っ!!」
ピリピリした空気がここにだけ流れていて、いた堪れずに口を挟んでも私の言葉は見事に無視されていく。
「わかってますよ?
見ず知らずの男に抱かれて“廉”っていうヤツを忘れようとしてた紗和ちゃんを知ってるんで……
だから、あんたにだけは渡したくない―――」
真っ直ぐに啓祐を見つめて話す晴哉の言葉に嘘は感じられないし、むしろ真剣すぎて……
私も啓祐も、それ以上何も言えなくなっていた。
「……紗和ちゃん、行こう?」
俯いて言葉を失くしていた私に、晴哉がにっと笑いかけて……
そのまま強く手首を握られたと思ったら、走り出した晴哉によって、私は引きずられるようにして店を後にしていた―――