WITH
「紗和ちゃん……さっきから、溜め息吐いてばっかりなんだけど?」
「んー…、ゴメン……」
珍しく困ったように笑いながら運転している晴哉に、気の無い返事を返している間にも、車はあっという間に住宅街を抜けて海岸沿いを走っていた。
数十分後―――
車が止められたのは、夏には海水浴客で賑わう砂浜だった。
水が澄んでいて砂がサラサラと心地良い感触なのが売りのこの砂浜も、シーズンオフの今は観賞用にしかならないだろう。
車を降りて見渡してみても、深夜の冬の海は黒色に塗り固められていて、微かな月明かりでも海水が澄んでいるかどうかなんて、目に見えてはわからなかった。