WITH


砂浜へ続く幾段かの段差に座っていると、冷たい風に乗って潮の香りがした。


目を閉じれば、寄せてはかえす波の音が体中に響いて……


このまま消えてしまえたらいいのに―――


そんな、善からぬ考えを浮かべていた私の隣に、人の気配がした。



「紗和ちゃんさぁ……、マジで何かあったんだろ?」



ゆっくりと目を開くと、海を真っ直ぐに見つめる晴哉の姿がそこにあった。



「あったよー…、蜜華さんに会っちゃった」



なんでもないことのように軽い口調で話してみたら、自然と笑い声もこぼれていた。


その笑い声が、どういう意味合いのモノなのか見当はつかないけれど。



「はっ!?“蜜華さん”って誰?」


「廉の奥さん♪」



同じように軽い口調で返してくれる晴哉に、私は今日の出来事を普通に話していた。



< 219 / 350 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop