WITH
砂浜へ続く幾段かの段差に座っていると、冷たい風に乗って潮の香りがした。
目を閉じれば、寄せてはかえす波の音が体中に響いて……
このまま消えてしまえたらいいのに―――
そんな、善からぬ考えを浮かべていた私の隣に、人の気配がした。
「紗和ちゃんさぁ……、マジで何かあったんだろ?」
ゆっくりと目を開くと、海を真っ直ぐに見つめる晴哉の姿がそこにあった。
「あったよー…、蜜華さんに会っちゃった」
なんでもないことのように軽い口調で話してみたら、自然と笑い声もこぼれていた。
その笑い声が、どういう意味合いのモノなのか見当はつかないけれど。
「はっ!?“蜜華さん”って誰?」
「廉の奥さん♪」
同じように軽い口調で返してくれる晴哉に、私は今日の出来事を普通に話していた。