WITH
「晴哉、ありがとね?」
「急に、何……?」
訝しげに私を見下ろす晴哉に、薄く微笑んで
「何となく……言いたくなったから」
そう言った私に一瞬きょとんとした晴哉は、次の瞬間けらけらと笑って
「お礼は、オレを好きになってくれればいいよ♪」
いつも通りの軽いヤツに戻ってた。
本当は、なんとなくじゃなくて素直にお礼を言いたくなったから。
素直じゃない私は、結局のところは素直に“お礼”だとは告げられないでいるのだけれど。
きっとあのまま一人で部屋にいたら、いつまでもこれから出すべき答えを認めていなかったと思う。
今でも廉を好きだから出来れば離れたくはないけれど、蜜華さんを愛している廉にとって私は“2番目”だから。
悲鳴を上げてしまいそうなほどに胸が痛むけれど、廉の幸せな結婚生活がいつまでも続くことを願って……
笑顔で別れられるように。
「……バーカ♪」
晴哉から離れて笑いながら言った頃には、心の中で決めていた。