WITH
精一杯の強がり
シティホテルの最上階。
バーのカウンター席でグラスを傾ける廉の横顔に、ついつい見惚れてしまう。
今では見慣れたスーツ姿も、よくよく考えれば、会社が終わった後のスーツを着ている時にしか会わないからで……
この2ヶ月の間、現実を見ようとしていなかったことに気付いて、今は自分を嘲笑うことしか出来ない。
「……どうした?」
じっと見すぎていたのか……
首を傾げて私の顔を覗き込む廉に、にっこりと微笑み「廉に見惚れてたり……?」そう答えた私の頭をけらけらと笑いながら撫でてくれた。
このまま、時間が止まってしまえばいいのに―――
そう思ってしまう。
廉と会えることになったのは、あの電話からちょうど1週間後……それが今日。
ようやく廉と会えたのに、今日が最後だなんて……
アルコールを飲んでいるこの時間さえも、大事に目に焼き付けておきたいから、廉を見つめては見惚れてしまっていた。