WITH
本当は泣きたいくらいに悲しいけれど、廉には笑った顔を覚えていてほしいから……無理してでも、私は笑顔を作る。
精一杯の強がりを、見抜かれないようにして―――
「なぁ、紗和……部屋、行こっか?」
パサリと流れ落ちる茶色い髪の隙間から覗く、廉の真剣な瞳に吸い込まれそうなほど真っ直ぐ見つめられて……私はゆっくり頷いた。
エレベーターホールへ向かう間に握られた手をギュッと握り返して。
エレベーターに乗り目的の階のボタンを押すと、廉は私を抱き寄せて唇を重ねた。
突然の行為に準備の出来ていない私は、すぐに息苦しさを覚えて廉の胸を叩くけれど、廉の唇は離れてはくれなくて……
それでも苦しくて声を漏らしていると不意に唇が離れて、息を吸い込もうと口を開いた瞬間、より深く重ねられた唇。