WITH
シャワーを浴びて、何事も無かったようにスーツを着た廉と、同じく帰り支度を済ませた私。
今から蜜華さんの許へ帰る廉に、ちゃんと告げなければいけない“別れ”を考えれば考えるほど、息苦しくなって胸が痛い。
来た時とは違い、シーツの乱れたベッドの淵に座り、腕時計をはめている廉の背中に小さく息を吐いて。
そっと近付き、その存在を温もりを……最後に確かめるように、背中越しに抱き締めた。
「……紗和?どうかした……?」
「前、向いてて……」
振り返ろうとする廉にギュッと抱き着いて、私の顔は見られないようにした。
言葉で突き放せても、裏腹な態度や表情をしてしまっていたら……
廉が、蜜華さんのところへ帰り辛くなってしまうかもしれないから―――