WITH
閉じた瞼の裏に、誇らしげな笑顔を湛えた蜜華さんが浮かんで、掻き消そうとしても消えてはくれなくて……それはより鮮明に、映し出されていく。
「“新しい命”……???」
ゆっくりと抱き締めていた腕をほどいて、ゆっくり振り返った廉と視線が重なる。
心で泣いて、顔は笑って……
ちゃんと最後に笑えたから、笑顔の私を覚えていて―――
「今までありがとう、廉……
私も、愛してたよ……さよなら―――」
そのままコートとバッグを手にして、急いで部屋を出た。
廉が追って来ないうちに、ちょうど止まっていたエレベーターに駆け込んで……
扉が閉まる寸前、「紗和っ!!」って呼ぶ、廉の声が聞こえた。
廉の姿を捉えなくなった瞳は、今まで笑っていられたことが嘘のように、すぐに潤み出して視界をぼやけさせる。
エレベーターが止まりホテルのロビーを抜け外へ出て、冬の夜の冷たい空気に触れた瞬間、頬に流れた一筋の涙が温かく感じられて、余計に胸が苦しくなった……