WITH
数十分後。
注文したコーヒーを口にしていると、「ねぇ、紗和ちゃん……」おずおずと晴哉が口を開いた。
私は視線だけを向けて、次の言葉を促す。
「もう……、アイツのことは吹っ切れた?」
私の視線から逃れるように、キョロキョロと視線をさまよわせる晴哉が聞き辛そうにしていて……
それでも聞いてきた晴哉に、私は上手な答えを探せないでいた。
賑やかな喧騒とは真逆な程に、私達の間に流れていたのは沈黙。
「ゴメン……ッ!!……今の、忘れて?」
それを破ったのは、晴哉の覇気の無い小さな声だった。
そんな晴哉に何かを言ってあげることも出来ず、私はコーヒーカップを握ったまま窓の外の喧騒を見下ろすことで、その場の空気から逃げていた。