WITH
いつまでも歩き出さない私に気付いた晴哉は、ピタッと歩みを止め私の方へ踵を返すと、
「とりあえず、来て?……頬っぺた、腫れてるから冷やそう?」
そう言いながら、私の頬を包むように掌が触れていて、ボーッとしたままの私は、至近距離の晴哉を見上げる体勢になっていた。
「……紗和ちゃん、それは……無意識なんだよね?」
「何が?」
苦笑いを浮かべる晴哉に首を傾げた私に、頬から手を離して自分の頭を掻きながら、
「いや、うん……わかんないなら、いいんだけど……」
そう言って、空笑いをしながらも私の手を優しく握って歩き出した晴哉に、今更ジンジンと痛みを感じ始めた頬を冷やすために、大人しく手を引かれるまま着いて行った。