WITH



「あの……紗和ちゃん?キス……してもいい?」



抱き締められてしばらくした頃、伺うようにそう尋ねられて見上げれば、苦笑している晴哉がいた。



「晴哉がそんなこと聞くなんて……どうしたの?」



出会ってすぐに体は重ねてしまっているし、その後だって不意をついてキスしてきたりしていたのに……


気持ちを伝えて思いが繋がってから聞くなんて、おかしくないですか?



「いや、だってさ……?前、キスした時、泣きそうな顔で睨み付けられちゃったし……今、拒否られたらスッゲー凹みそうな気がしたんだもん」



晴哉の顔を見つめて聞いていたら、途中で強く抱き締められ晴哉の胸に顔を隠してしまう状態にされて、声だけで伝えられた晴哉の心情。


晴哉が言っているのは、12月の……啓祐から結婚の報告を受けた後に、偶然会った時のことだと思う。



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