WITH
耳許で聞こえた廉の声が、私の顔を上げさせて……
その瞬間、私の瞳が捉えたのは、息を切らして4〜5メートル離れた先に立っている晴哉の姿だった。
「晴哉……」
私が微かに漏らした声に、廉はゆっくりと腕の力を弱めて私を解放して。
そうしている間に近付いてきたらしい晴哉は、私達二人を見下ろすように立っていた。
「何……紗和ちゃん、泣かしてるんだよ?」
グイッと腕を引かれ体ごと晴哉に抱き寄せられて、私は廉から引き剥がされた。
静寂が……ピリピリした空気を伝える。