WITH
「なぁ……?」
突然、発せられた廉の声に、
ビクッ…と肩を震わせてしまう。
恐る恐る、僅かに視線を上げれば、私を真っ直ぐに見つめる廉の姿があって。
その表情は、何を考えているのかわからない……無表情。
私には、もう……
あの笑顔を、向けてくれることはないのかもしれない。
「な、何……?」
視線を合わせることも出来ず、
再び足元をさまよう私の視線は、
ガラスのテーブル越しに廉の組まれた長い足を見つめてしまう。
「紗和、とりあえず顔上げて?」
廉に名前を呼ばれると昔からなぜか逆らえない私は、
その声に、素直に顔を上げてしまっていた。