WITH
「で……なんでそんなに、機嫌悪くなってんの?」
「べ、別に機嫌なんか悪くないっ!!」
歩き出して、数分後。
蜜華さんの姿も見えなくなった頃、廉にそう言われ左右に顔を振って否定したものの。
「じゃあ、この顔は何?」
しっかり繋がれていたはずの手をすんなりほどかれて、私の頬は廉の指につねられる。
「いた、い………」
痛くもないのにそう呟いて。
図星を突かれた私は、そのまま黙り込んでしまう。
「さーわ?」
廉の優しく呼ぶ声と共に頬から指は離れて。
行き場をなくした私の手は、廉の指先をキュッと握った。
そんな私に、廉は腰を落として私と顔の高さを同じにすると
「今日は、親父さんに怒られるか……?」
そう言って、にっこり微笑んで見つめるから、私はコクンと頷く。
廉は「よし…!!」と言って腰を上げると、私の手を握り直して歩き出した。