WITH
静かにそう告げ、病室を出て行こうとするお母さんに、
「お母さん、廉は……?」
「谷口くんなら、1時間前には帰ったわよ?『面会時間過ぎてるから、また明日来ます』って。救急車で運ばれる時も、付き添って来てくれたのよ」
言われて壁にかけられた時計を見れば10時半で、カーテンの隙間から見える空が暗いことから、随分長い間意識をなくしていたんだと気付かされる。
家を出たのは、お昼前だったのに……
「じゃあ、また明日来るから……ちゃんと、安静にしてるのよ?今日はもう、イロイロ考えなくていいから」
閉じられたドアの音と共に静寂が訪れて。
こんなことが起きたあとなのに、妙に冷静でいられる自分に、戸惑いを覚えた―――