カノジョの死因、他殺。
「佐伯の事件は、何で起こったか知ってるか??」
「・・・・・追っていた事件の被害者の家族の恨みを買ったって聞きましたけど・・・・」
部が違ったから、詳細までは知らない。
「・・・・・あの時、佐伯は別の事件を追っていたんだよ。 で、その途中でリンチに近いカツアゲをされている人を見かけてな」
名波さんが眉間に皺を寄せながら、ゆっくり話す。
「被害者は1人で、加害者は5人。 全員男。 もちろん佐伯は助けようと思ったんだよ。 でも、女1人が立ち向かったところで、被害者を助ける事も出来ないし、自分もやられてしまうと考えたんだ」
「・・・・・・」
「だから佐伯は、即座に警察に連絡して、警察が到着するまでの間、犯人の死角から犯人の写真を撮り続けたんだ。 警察が来る前に逃げられてしまった時の為、 あと、雑誌に載せて世間に悪人の顔を晒す為」
『しっかり犯人の顔押さえて、雑誌にして世間に晒してやろう!!』
佐伯さんは昨日、同じ事を言っていた。
「結局犯人は捕まったけど、被害者は死んだ。 それを知った佐伯は自分が撮った写真を犯人の実名つきで雑誌に載せたんだ。 オレも、今でも佐伯の行動は正しいと思ってる。 ・・・・・でもな」
名波さんが1つ、大きな溜息を吐いた。
「被害者は1人息子だったらしい。 残された両親はさ、たった1人の息子が殺されるなんて、想像を絶する辛さだろうな」
『オレは子煩悩の愛妻家だ』名波さんは同じ親として、被害者の両親の気持ちが痛い程分かるのだろう。
「被害者の父親が佐伯の記事を見て『写真なんか撮ってないで、なんで息子を助けてくれなかったんだ!?』って佐伯を襲ったんだ。 冷静に考えれば、あの時佐伯が助けに入れば、佐伯だって死んでいたかもしれないし、写真なんてまず撮れないだろうから、雑誌で犯人も晒すことも出来なかったって分かりそうなモンだけどな。 ・・・・・冷静になんて、なれないよな。 息子殺されて」
「・・・・・・・」
言葉を失う。
ただ、言葉を失う出来事はこれだけではなかった。