カノジョの死因、他殺。
カノジョの嘘。
デスクに着き、右手で弁当の蓋、左手でパソコンを開く。
最早食いながらやるしかない。
時間が、全然足りない。
パソコンが立ち上がるまでのわずかな間に、箸で白飯を豪快に掴み上げ、口にぶっこむ。
「菊池、佐伯から電話ー」
吉田さんが『保留1番な』とオレに人差し指を立てた。
・・・・・・口いっぱいの時に限って・・・・。
「・・・・・ふぁー。 ほでんわはわりました」
『え?? 何??』
佐伯さん、絶対わざとだ。
とりあえず、お茶で口の中のものを流しいれる。
「いや、分かるでしょ。 『はい、お電話代わりました』ですよ」
『ごめんごめん、お昼中だったかぁ。 あのね、菊池くんのパソコンに事件の詳細とか、犯人の生い立ちとか、犯人の人柄とかを取材したものをメールしておいたから、使える様なら使って。 そんだけー。 ゴハン中失礼しましたー。 菊池くん、シゴト押し付けてばっかでゴメンね』
佐伯さんが用件だけを言って早々に電話を切ろうとした。
「・・・・・・佐伯さんは嘘吐いてばっかですね」
『うわー。 嘘つき呼ばわりー』
「だってそうでしょ??」
本当は自分で書きたい記事なのに。
『大丈夫、ワタシの嘘は誰も傷つかない』
佐伯さんはあっさり自分が嘘つきである事を認めた。
佐伯さんの嘘は、佐伯さん以外は傷つかない。
佐伯さんしか傷つかない。