隣の女
「なんで、マスクしてるんだよ。」

俺が入学してこいつの顔を見たときからずっと思っていたことだ。

「なんでってあんたに関係ない。」

「別に話したくないなら話さなくてもいいよ。聞いてみただけなんだ。俺、入学してお前を見てからずっと思ってたことだったから。」

「・・・。」

宮坂は言葉を返さなかった。

「もう、暗いし危ないから送っていくよ。」

俺はそういったが、

「あたしは、人に顔を見られたくなくてマスクをしているんだ。」

突然宮坂がそういった。

「そうなんじゃないかって思ってたよ。」

俺は、宮坂が便所飯をしていると知った時点でそうじゃないかと思っていた。

「あたしはこんな風に暗くて地味だから話しかけてくる人がいなかった。」

宮坂は話を続けた。

「だけど、あんたは違った。みんながあたしを避ける中であんただけはあたしに話しかけてくれた。毎日挨拶もしてくれた。嬉しかった。」

俺は宮坂の話を黙って聞いていた。
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表紙・目次

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