隣の女
「だけど、席替えしてから挨拶してくれなくなった。」

宮坂が言ったその言葉は深く俺の心に刺さった。

「ごめん…。」

俺の言葉に宮坂は首を小さく横に振り話を続けた。

「だけど、そのおかげで学んだ。あいさつは人を幸せにするんだって。そして、それを学んだのと同時に後悔した。なんで、あたしはあいさつを返さなかったんだろうって。」

「俺、お前と席が離れたのにわざわざあいさつしに行ったら迷惑だと思ってわざとあいさつしなかったんだ…。ごめん。」

「いいの。そのおかげで学んだって言ったでしょう。
 あんたはあたしが今まで見てきた男とは違うね。」

そういって少し微笑んだ、ように見えた。
マスクとメガネでよく見えなかったのだ。

「帰ろう。」

宮坂のその言葉で俺たちは学校を後にした。
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