先輩と私と。
気味の悪いおじさんが笑いながら席を譲ってくれた。




そのとなりの若い女性も気を使って席を退いた。






2人で顔を見合わせて苦笑いする。





だけどせっかく気を使ってくれたからそれに甘えることにした。




座ったら手を離してくれるかと思ったけど離してくれない。





ますますその力は強くなるばかり。





だけど何故か手が痛くなることはなかった。




でももう心臓のドキドキに耐えられなくなって、




「ねぇ、離してよ」






と情けない声で言う。




すると、





「ヤダ」




と意地悪な声が返ってきた。






「なんでよぉ」






「何でって、何でも」





「答えになってない!!!」




「まぁまぁ、ほら行くよ」





そういってまた手を強く握る。




そのまま立ち上がって電車を降りる。




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