もう一度愛を聴かせて…
   ◇


翌日、橘さんは妊娠検査薬を買って、わたしの家に来てくれた。

高校生のわたしが買うのは恥ずかしいだろう、と言って。でも、男が買うのも恥ずかしかったと思う。


わたしはトイレに入り、キャップを開け……説明書に書いてある通りにして……ふたたびキャップを閉じて数十秒待つ。


トイレから出ると、彼はすぐ前の廊下で待っていた。


「……どうだった?」


わたしは黙ってスティックを差し出す。判定箇所には赤いラインが……陽性だった。


「間違いない、か」


彼のなんともいえない表情に目が熱くなり、わたしの気分はどん底まで落ち込んだ。


「病院……心当たりある?」


首を横に振った。

産婦人科にかかるなんて考えたこともない。それに、市内の病院なんて絶対に行けない。


「じゃあ俺が探してくるから。友達に聞いてみる。市内じゃないほうがいいよな?」


今度は首を縦に振る。


< 22 / 56 >

この作品をシェア

pagetop