もう一度愛を聴かせて…
わたしもそうだけど、橘さんのほうが人に知られたら終わりだと思う。

警察官……それもキャリア組の警察官僚が女子高生を妊娠させた、なんて。出世がなくなるどころか、週刊誌にだって載るかもしれない。

極秘で手術を受けられるところでないと……。

そう考えただけで、胸がグッと詰まる。それは吐き気に変わって、わたしは慌てて洗面所に飛び込んだ。


「大丈夫か? ゴメンな。本当にゴメン」


背中をさすってくれた手はとても優しくて、心地よかった。

愛されていると錯覚してしまうくらいに。


「とにかく、俺のせいだから。どんなことをしても、責任は取るから」

「それは言わないで! 責任って言葉だけは言って欲しくないの、だから……」


わたしは、涙で目の前が滲んでくるのを必死で我慢した。

もう、彼の前でこれ以上泣きたくない。


「でも、それじゃ俺はどう言えば? ゴメン、こういうのは初めてで……そりゃあ何度もあっちゃ困るけど。ああ、ゴメン、本当にカッコ悪くてゴメン」

「大丈夫。わたしは大丈夫だから……病院紹介してくれたら、ひとりで行ってくるから」

「何言ってるんだ!? 俺も一緒に行く。そんな……おまえをひとりでなんて行かせられるものか!」

「ダメだって。産婦人科なんて、ふたりで行ったら目立つもの。終わったら、ちゃんと報告するから」


そう言って、わたしは彼を説得したのだった。


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