もう一度愛を聴かせて…
「……はい」


わたしは俯いて答えた。受精なんて、妙に生々しい。


「じゃあ、彼にもそう伝えてください。直接電話を受けたから、おおよその話は聞いてますが……えっと、若いから不安もあると思うけど」  


『若いから』って言葉で、先生は問診票を見ながらクスッと笑った。

多分、年齢のことだってピンときた。橘さんは十七歳の女子高生って話したのだ。バレたらお互いに困るのに、どうして話したのだろう、と思うとわたしは苛々した。


次の瞬間、勢い込んでわたしは自分から尋ねた


「わかってます。いつがいいんでしょうか? わたしはもう覚悟はできてます」

「いつって……」

「いつ手術を受けたらいいですか? 周りに気づかれないうちに……よろしくお願いします」

「中絶ってこと? おかしいわね。そんな話は聞いてないんだけど。もう一度よく相談してから決めたほうがいいんじゃないかしら?」


肝心なことは言わなかったんだ。

それってズルイって思った。決めてくれたらよかったのに……彼は、わたしに決めさせるつもりなんだ。


「こんなはずじゃなかったんです。こんなつもりじゃ……だって、たった一度のことで」


泣き言は言わないつもりだったけど、悔しくて仕方なくなり……。


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