もう一度愛を聴かせて…
「付き合ってるつもりでした。デートしたり、キス、したり……とっても優しくて……好きだったから」

「あのね……たとえ恋人同士で、それ以前に性行為があったとしても、合意のないセックスはレイプなのよ。麻生さん、あなたは彼とセックスするときに合意しましたか?」

「……」


わたしは無言で首を振っていた。

だって、合意じゃなかった。やめてって、イヤだって何度も頼んだ。

でも……、


「でも、好きな人なんです。普通に愛してるって言ってくれて、求められたら……合意してました。だから」

「でも、あなたが経験した一度のセックスは合意じゃなかった。そうなのね?」

「は……い。わたし、どうしたらいいのか……」


安西先生は深くため息をついた。

わたしはとんでもないことを言ってしまったのかもしれない。不安になるが、先生の口調は穏やかなものに変わった。


「ごめんなさいね。避妊は義務だ、あなたも責任を持たなきゃいけない、なんて言って。妊娠の原因がレイプなら、女性には堕胎を選ぶ権利があります。なぜなら、妊娠の時点でその権利を奪われてるのだから。あなた自身が手術を受けるつもりがあるなら、一日でも早いほうがいいわ。身体が傷つくことは変えられないけど、少しでも傷を浅く済まさなきゃ。あなたはまだ若いし、やり直しはいくらでもできる。きっと、本当の愛情で包み込んでくれる人が現れるでしょう。その人の赤ちゃんを産めるように、傷を癒やさなきゃね」


これはわたしのせいじゃないんだ。

そんなふうに言われて、肩の荷が下りた気がして……。

何もなかったことにできる。

リセットできる。

そんな考えでわたしは「お願いします」と口にしていた。


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