もう一度愛を聴かせて…
興奮するわたしとは逆に、橘さんの声はやけに気の抜けたものに感じる。
「は? お、おい……若菜。おまえ、何を言ってるんだ? そんなこと、今さら」
「赤ちゃんを見たのっ! 心臓が動いてた。一生懸命生きてたのよっ! 堕ろすのはイヤ……ゼッタイにイヤ! この子を殺すなら、わたしも一緒に死ぬわ! この子ひとりで死なせたりしない。わたしの子供なの」
そのとき、背後でドアが開く音がした。
振り向くと、ものすごい形相でお兄ちゃん――麻生優が立っていた。わたしは何も言わずに慌てて電話を切る。
「おまえ……妊娠三ヶ月だと? 何やってるんだっ! 相手は誰だ。携帯よこせっ」
お兄ちゃんはわたしから携帯を取り上げようとした。
でも、なんとか死守して、そのまま花瓶の中に携帯を押し込む。水没すればデータは見られなくなる。橘さんのことも知られないって思ったから。
「若菜、おまえ……」
殴られる……そう思って目をつぶった。
でも、
「なんでだ、若菜。なんで、そんな無責任な男と、そんな関係になったんだ!」
お兄ちゃんは電話を聞いていたのだ。
彼の名前を口走らなかったことを思い出してホッとした。
「は? お、おい……若菜。おまえ、何を言ってるんだ? そんなこと、今さら」
「赤ちゃんを見たのっ! 心臓が動いてた。一生懸命生きてたのよっ! 堕ろすのはイヤ……ゼッタイにイヤ! この子を殺すなら、わたしも一緒に死ぬわ! この子ひとりで死なせたりしない。わたしの子供なの」
そのとき、背後でドアが開く音がした。
振り向くと、ものすごい形相でお兄ちゃん――麻生優が立っていた。わたしは何も言わずに慌てて電話を切る。
「おまえ……妊娠三ヶ月だと? 何やってるんだっ! 相手は誰だ。携帯よこせっ」
お兄ちゃんはわたしから携帯を取り上げようとした。
でも、なんとか死守して、そのまま花瓶の中に携帯を押し込む。水没すればデータは見られなくなる。橘さんのことも知られないって思ったから。
「若菜、おまえ……」
殴られる……そう思って目をつぶった。
でも、
「なんでだ、若菜。なんで、そんな無責任な男と、そんな関係になったんだ!」
お兄ちゃんは電話を聞いていたのだ。
彼の名前を口走らなかったことを思い出してホッとした。