もう一度愛を聴かせて…
橘さんはタジタジになって恐縮している。


「はい、はじめまして。今回は色々ご迷惑をおかけして、本当に申し訳ありませんでした」

「麻生さんから聞きました。いくら恋人同士でも、合意の上でないと強姦罪が成立するんですよ。よぉくご存知のはずですよね? 橘警部補殿」

「もちろん、知っています。彼女が許してくれないときは……服役も覚悟しています」


橘さんはびっくりするような言葉を口にした。


「未経験の彼女とそんな形で結ばれて……しかも、避妊を怠ったのはあなたでしょう!? 妊娠した彼女をひとりにして、こんなに泣かせて、倒れるまで苦しめて……いい歳をして、恥を知りなさい!」

「はい! 本当に申し訳ありません。心から反省してます。彼女が許してくれるなら、一生大切にします。二度とこんな苦しい思いをさせたりはしません。命に代えても、子供も彼女も自分が守ります」


このときになってはじめて、わたしは気がついた。

橘さんの左目の周りが青紫になり、頬が腫れていることに。唇の横には絆創膏も貼ってあって……。


「橘さん、顔、どうしたの?」

「あ、これ? 麻生署長に殴られた。おまえからの電話が待ちきれなくて、家に行ったんだ。そうしたら、若菜がいなくなったって大騒ぎで……。俺が子供父親だって告白したら……ボコボコにされた」

「アノこと、言ったの?」


レイプ同然に奪ったことだ。

でも、お父さんがそれを知ったら、この程度で済んだだろうか?


< 50 / 56 >

この作品をシェア

pagetop