【短編】ユキと最後のKiss
ユキと最後のKiss


「ねえねえ、あたしね、いいもの見つけたんだ」


そう言ってニッコリと笑った彼女に初めて恐怖を覚えた。

それは、希望がいっぱい詰まった何かを見つけて、それを見せびらかしたがる幼い子供のような笑顔で、何も怖がる事はないはずだ。

だけど、彼女が手にしているものは、刀身に真っ黒な百合が刻まれた剣。

彼女の表情とはとてもアンバランスなものだった。


「そ、その剣はどうしたの?」

「なんかね、寝室に置いてあったの。これは使えるなあって思ったんだ」


目を輝かせている彼女がとても怖かった。

恐ろしくてたまらなかった。


「そ、そうなんだ。なんで、そんなものあったんだろう。犯罪になっちゃうね」

「そんなこと気にしなくていいよ。今から私達死ぬんだもん。関係ないよ」


躊躇なく突かれた剣を目の前に、どうしてこんなことになってしまったのかと、疑問と絶望でいっぱいの中、思った。



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