【短編】ユキと最後のKiss
ユキと最後のKiss
「ねえねえ、あたしね、いいもの見つけたんだ」
そう言ってニッコリと笑った彼女に初めて恐怖を覚えた。
それは、希望がいっぱい詰まった何かを見つけて、それを見せびらかしたがる幼い子供のような笑顔で、何も怖がる事はないはずだ。
だけど、彼女が手にしているものは、刀身に真っ黒な百合が刻まれた剣。
彼女の表情とはとてもアンバランスなものだった。
「そ、その剣はどうしたの?」
「なんかね、寝室に置いてあったの。これは使えるなあって思ったんだ」
目を輝かせている彼女がとても怖かった。
恐ろしくてたまらなかった。
「そ、そうなんだ。なんで、そんなものあったんだろう。犯罪になっちゃうね」
「そんなこと気にしなくていいよ。今から私達死ぬんだもん。関係ないよ」
躊躇なく突かれた剣を目の前に、どうしてこんなことになってしまったのかと、疑問と絶望でいっぱいの中、思った。
< 1 / 34 >