【短編】ユキと最後のKiss


何が起こったのかとそっと目を開いた。

目の前には居なくて、まさかと後ろを振り返る。

男は姉の前にいて、ゆっくりと剣を持ちあげた。


「いやぁっ、いやよ死にたくない。死にたくないの! 殺さっ!?」


許しを請うように叫んだ姉の言葉も虚しく、命が終わる音が僕の鼓膜に響いた。


 どうして、先に姉を殺したのか分からなかった。

どうせ殺すなら先に僕や彼女を殺してくれたら、少なくとも姉が死ぬ瞬間なんて見ずに済んだのに。

なんて思う自分は何処までも利己的で狡くて醜い。


 マントの男は漸く僕達の方を振り返った。

黒いマントが顔を覆い隠していて、表情が見えない。

ずんずんと歩いてくるのを見て、次は僕達が死ぬ番なのだと思った。

目の前で止まるとすぐさま剣を振るった。



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