【短編】ユキと最後のKiss
夢に馳せるように笑顔で語る彼女はとても幸せそうで、それだけなら別に怖いだなんて思わないだろう。
寧ろ、微笑ましい光景だ。
でも、その手にあるのは刀身に黒いユリが刻まれた剣で。
正気の沙汰とは思えなかった。
「そ、その剣はどうしたの?」
「なんかね、寝室に置いてあったの。これは使えるなあって思ったんだ」
爛々と語る彼女が恐ろしくてたまらない。
「そ、そうなんだ。なんで、そんなものあったんだろう。犯罪になっちゃうね」
「そんなこと気にしなくていいよ。今から私達死ぬんだもん。関係ないよ」
サラリとそう言って、躊躇なく僕を貫こうと剣を突いた。
それを間一髪で避ける。
心臓がどくんどくんと早鐘を打つ。
嫌な汗が背筋に流れて鳥肌が立つ。