【短編】ユキと最後のKiss
全てが愛しくて自然と口が緩むのが分かる。
愛しい彼女の寝顔を見て満足した僕は彼女を起こそうと体を揺すった。
「朝だよ。起きて」
「……うーん。もうちょっと……」
煩わしそうにそう言って、彼女は一つ寝返りをうつ。
「もう、仕方ないなあ」
僕は軽く溜息を吐いて、ベッドから抜け、キッチンの方へと歩き出す。
と、引っ張られていることに気付く。
視線だけ後ろへと向けると、寝転がっていたはずの彼女がベッドの上に座ったまま、僕の服の裾を掴んでいる。
それを見て、僕は溜息を吐いた。
「……やだ」
小さく呟くように、おねだりをする彼女を心底狡いと思った。
彼女の方を向いて、視線を合わせるように座ると、彼女がふわりと笑う。
嗚呼、彼女は分かっていてこんなに可愛い行動をとるのか。
いいや、彼女の事だから、無意識だ。
だから、とても質が悪い。