【短編】ユキと最後のKiss
「なんで、避けるの? 今から夢のような世界に行けるのに、怖がる必要なんてないんだよ?」
「死んだら一緒にいられるとは限らないよ?」
「私が一緒にいるもん。そして、一緒に2人の世界へ行く。これで大丈夫でしょ? ほら、死んでよ!」
狂った笑顔で彼女は僕を突き、僕はそれをすれすれでかわすと言うのが何度か続いた。
でも、狭い部屋でずっと逃げてはいられない。
警察を呼ぼうと電話の方へ向かう。
だが、いざ受話器を手にしようとすると躊躇った。
通報しなければ死ぬと言うのに、どうしてここで躊躇うのか。
自分でも理解できなかった。
その間に電話から遠ざかり、隅に追いやられた僕は壁に挟まれ逃げ場をなくす。
「これでもう逃げられないよっ?」
その言葉と同時に僕のお腹を剣が貫いた。
「うっ…………」
すぐさま剣を抜かれて、身体から血が溢れだすのが分かった。