【短編】ユキと最後のKiss


痛みに耐えきられなくなった僕は座りこむ。

お腹を抱えて顔を歪めている僕とは裏腹に、彼女は剣から滴る血を指にとって舐めている。


「甘いね。愛しい人の血がこんなに甘くて美味だなんて知らなかったよ」


愛しそうに僕の頬を撫でる彼女はもう、歯車を何処かに落としてしまったんだと思う。

彼女は目の前に座り込んで、お腹を押さえている僕の手を取る。

そして、血だらけのその手に剣を持たせた。


「な、にする……気……?」


掠れた声で問うと、彼女はさも当たり前のように答えた。


「なにって、殺してほしいんだよ。私が君を殺して、君が私を殺すの」


頭を鈍器で殴られるようだった。

僕が彼女を殺すだなんて、そんなこと出来るわけない。



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