【短編】ユキと最後のKiss
非人道的だからと言うのもあったけど、なにより殺されかけても僕は彼女の事を想っていた。
だから、通報する事が出来なかったんだとそこで漸く気付く。
「なに、いって……んの?」
「嗚呼、そうか。もうそんな力がないんだよね。仕方ないから君は手を添えてるだけでいいから。あとは私が……」
そこで言葉を切ると、彼女は思いっきり自分のお腹に剣を刺した。
「あぁっ……」
目の前で、自分は何もしてもいないとは言え、自分の握ったその剣で彼女を貫いた事に言葉を失った。
それだけでなく、彼女はその剣もすぐに抜いて投げ捨てた。
一気に血で出来た水たまりが出来あがる。
その真ん中にいる僕達の下半身は血でべとべとになった。
苦しそうにしながらも彼女は幸せそうに笑う。
「ははっ……こ、れで、一緒……だね」