【短編】ユキと最後のKiss


途中で見ていられなくなった僕はドアを背に座りこむ。

その後も音は鳴り止むことはなく、彼女を殴る音が聞こえた。

いや、きっと殴って、蹴って、踏みつけているのだろう、そんな音が聞こえた。


「貴女はいつも笑っていて気持ち悪いのよ! どうして他の兄妹みたいに運動や勉強が出来ないの!? 出来損ないはこの家にいらないのよ!!」


いつの日か、彼女が言っていた言葉を思い出した。


『お母様はおかしくないんだよ。

私は優秀な家庭教師を付けていると言うのに勉強はいつも学年で最下位を争う程成績が悪いんだもん。

徒競走はいつもビリだし、球技をやればノーコンの私はいつも誰かを怪我させちゃうし、お稽古ごとも不器用な私は何度やっても上手くいかない。

何もかも要領の悪いこんな娘なのだから嫌われるのも仕方ないよ』


そう言って悲しそうに笑った彼女が脳裏に焼き付いていて今も離れない。



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